【女ま館だより9号】(1999年1月30日)


とってもしょぼいんですが、昨日(1月29日金曜日)、ほんの3秒ほど、少女まんが館分庫がオープン。明日には、なんとか間に合いそうです。以下は作品紹介ちらしです。


【少女まんが館分庫】
第1回
<オールド少女まんがBasic とりあえず12選>
<大島弓子小特集>

 まず、初回は、大井夏代(女ま館館長)が“オールド王道ポピュラー路線”で、とりあえず12作品選んでみました。女ま館蔵書の諸事情により、作品というより代表作家という感じになっておりますが……。また、「オールド少女まんが」世界を代表する作家のひとり、大島弓子さんの作品郡も、女ま館から16冊ほど持って参りました。なつかしもの、あたらしもの入り乱れております。
 では、簡単に各作品や作家の方々の紹介をいたしましょう。

●池田理代子「おにいさまへ…」(中公愛蔵版/同時収録作品「妖子」)
 70年代、宝塚で舞台化されて長蛇の列になるわ、テレビ化はもちろん、映画化されるわ、一体何種類の愛蔵版が出版されているのか……の超人気作「ベルサイユのばら」(ベルばら)を世に送り出し、少女まんがというジャンルの質の高さと量の広がりをおじさまな世界にも知らしめた池田理代子さん。この作品は彼女の代表作のひとつ。女子校を舞台に華麗にしめやかに繰り広げられる古典的作品。主人公の名は、御苑生奈々子(みそのお・ななこ)。おとうさまは大学教授。おにいさまは……(これは読んでのお楽しみ)。いやー、なつかしの“少女漫画”な設定。『週刊マーガレット』1974年12号〜39号に掲載。

●一条ゆかり「こいきな奴ら」「こいきな奴ら 2」(りぼんマスコットコミックス)
 今も現役ばりばり、この方の存在抜きに少女まんがは語れまい……。詳しくは、最近の『AERA』(99.1.18号)をご覧あれ。この作品は、見た目そっくりの男女な双子、ジュデェスとジュディス、クリーム・アラモード(スリのこそどろ)、パイ・エトワール(元・殺し屋)のこいきな4人組が、花の都・パリを舞台に活躍するおしゃれなお話。個人的には『デザイナー』が思い出深いけれど、この作品のキレのよさは、絶品。初出は『りぼん』1974年1月号。

●里中満智子「アップルマーチ」1〜2(講談社コミックスなかよし/2巻の同時収録作品「ちびとのっぽの歌」「ミニスカートはいやよ」)
 少女漫画界の大御所的存在、里中先生の若いときの勢いある作品。ちっちゃくてすてきな町、アップルシティはありとあらゆる文化施設がととのった学生街で、セントアップルハイスクールに通う主人公は、メイとマギーの双子の姉妹。ひとりは父に育てられて女らしく、ひとりは母に育てられて男らしく……。この作品の街のイメージって、今、そこにある危機、じゃなくて、今そこにもあそこにもあるあの街この街……な感じでございます。うーむ、やはり、少女漫画家は現代の巫女さんかも。掲載は『なかよし』1972年10月号〜1973年4月号。

●大和和紀「花の東京大ロマン はいからさんが通る」1〜4(講談社漫画文庫/4巻には番外編も収録されている)
 明治維新後、がんがんと西欧文物を取り入れまくり、一段落ついた大正から昭和初期の日本(東京)の空気って、実は、こんなんだったかいな? という幻想が広がります。少尉はかっこいいし、蘭丸は色っぽいし。主人公の紅緒さんは、剣はたつし、酒乱の破天荒なご性格。久しぶりに再読したら、笑いこけました。

●山本鈴美香「7つの黄金郷(エルドラド)」第1部〜第3部(マーガレットコミックス)
 70年末から80年代はじめにかけてまきおこったテニスブームの、たぶん、こっそりした火付け役を果たしたに違いない、ああ、感動のテニスまんが「エースをねらえ!」の作者による、未完の大作。ひー、長い一文ですね。すみません。ある時期から、まったく描かれなくなり(というより、生きてるのもやっととか)、巫女さんになったという風のうわさをききます。この作品、いつかは完結して欲しいけれど、完結はしないかも……。『週刊マーガレット』1975年26号〜1977年45号に掲載。

●萩尾望都「ポーの一族」1〜5(フラワーコミックス)
 14歳のまま、永遠に歳をとらず、人間の生き血を吸い、ばらのエッセンスティーをたしなんで、18世紀から現在まで生き続けるポーの一族、わかりやすくは、バンパネラのエドガー・ポーツネル男爵のお話。いや、アランやメリーベルやエディス他多数も登場。当時の少年少女たちの懐深くにしみこんだ大ヒット作にして、少女マンガを文学にまで高めたといわれたりする孤高の傑作。この5冊のみカバーなしです、あしからず。
 1975年当時、この作品と出逢ったある中学生は、毎晩、繰り返し繰り返し聖書のように読み浸り、窓を開け放して寝ていたそうです。エドガーが迎えにくるかもしれない、という妄想を捨てきれず……(それは私)。

●萩尾望都「トーマの心臓」1〜3(フラワーコミックス)
 “西ドイツの高等中学を舞台に、思春期の多感な少年たちの愛の世界が、はなやかに輪舞”とカバーの作品解説にあり。繊細な心の葛藤をストイックな筆致で見事に描き出していて、今読んでも、思わず、すっとその世界に入ってしまったりする(それも私)。初出は『週刊少女コミック』1974年5月5日号。
 萩尾望都さんは、少年愛というテーマを少女マンガにもちこんだ作家さんのひとり。現在、少年愛の世界を描く少女まんがは、やおいをへて、ボーイズコミックという一大ジャンルへと発展しているようです。

●竹宮恵子「ファラオの墓」1〜8(フラワーコミックス)
 ほんとは「空がすき!」「風と木の詩」を持ってきたかったんですが。「ファラオの墓」は、古代エジプトの王様の華麗なお話。『週刊少女コミック』1974年38号〜1976年8号に連載。

●木原としえ「あーらわが殿!」前遍・後編(マーガレットコミックス)
 『月刊ララ』に連載されていた明治末期のニッポン・バンカラ学生大河ロマン(むちゃくちゃな形容だ……)「摩利と新吾」(まりしん)の雛形となる作品。ほんとは「まりしん」を持ってきたかったんですが。とはいえ、「あーらわが殿!」も充分楽しい作品。男女七歳にして席を同じゅうせずという時代の明治末期、西洋に習おうと、男女共学の実験校となった男子専科の持堂院と女子専科のなでしこ女学院を舞台にしたお話。当時の少女まんがとしては“奇抜な題材”であった。個性的キャラ続出。『週刊マーガレット』1972年45号〜1973年11号まで連載。

●山岸凉子「日出処の天子」  (ひいずるところのてんし)1〜8と「馬屋古女王」(うまやこのひめみこ)(あすかコミック・スペシャル山岸凉子全集1〜9巻)
 かつての1万円札にあったしもぶくれ聖徳太子像をぶっとばし、柳腰華麗才気活発うれいまんたんの超能力者たる聖徳太子を打ち出した歴史大河ロマン。蘇我毛人との愛の行方は途中までハッピーにいくのだが、ラストがちと(かなり)悲しい。多数の男性ファンを引き寄せたに違いない画期的作品。『月刊ララ』1980年4月号から1984年6月号まで連載。「馬屋古女王」は1985年に創刊された少女漫画誌『あすか』(角川書店)の目玉作品だった。座敷牢で育てられた聖徳太子の娘さんのお話。

●大島弓子「綿の国星(わたのくにほし)」(花とゆめコミックス/同時収録作品「夏のおわりのト短調」)
 人間の姿に描かれたちび猫のかわいらしさといったら……。大島弓子さん独特の画風は誰にも真似できぬ、圧倒的オリジナリティがある。また、この作品は少女まんがに動物擬人化技法を導入確立した傑作か。“わたのくにほしい”とかけたタイトル。『月刊ララ』1978年5月号から掲載。以後、断続的に短編が発表されている。

●吉田秋生「BANANA FISH」1〜19(フラワーコミックス)
 ニューヨークのストリートを舞台にした、美貌の天才少年・アッシュと日本人青年・英ちゃんの愛の物語だったりする。70年代から80年代前半までに生まれた、いわゆる“ニューウェイブ少女マンガ”のおいしいエッセンスをどっさりつめこみ、うまくブレンドして、ぐんぐん読ませてくれる、スピード感溢れる作品。『別冊少女コミック』1985年5月号より連載が開始された大巨編の大人気作。“ニューウェイブ少女マンガ”の総括的作品かも。ぐっときます。
記 大井夏代(1999年1月29日)

「大島弓子」作品群
小特集はタイトルのみを紹介します。
■小学館文庫
「雨の音がきこえる」
「銀の実をたべた?」
「鳥のように」
■サンコミックス
「野イバラ荘園」
「いちご物語」1〜2
「F式蘭丸」(ふろいとしきらんまる)
「ジョカへ」
「ロジオンロマーヌイイチラスコーリニコフ―罪と罰より―」
「ミモザ館でつかまえて」
■フラワーコミックス
「さようなら女達」
■セブンティーン・コミックス
「バナナブレッドのプディング」
■あすかコミックス
「秋日子かく語りき」
「すばらしき昼食」
「つるばら つるばら」
「毎日が夏休み」
「ダイエット」

【少女まんが館分庫】
場所□デリ&カフェ「オー・インディア」内壁面
住所□東京都杉並区高円寺南4-6-11
電話□03-3314-0177
営業□11:30-22:30(金・土のみ21:30オーダーストップ)
定休□第1・第3月曜日
少女まんが館URL□http://www.nerimadors.or.jp/~jomakan/

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