【少女まんが館分庫】 第3回

<名香智子小特集>


 春夏秋冬で入れ替わることを目標にスタートした女ま館分庫ですが、この夏はちとお休みしてしまい、しばらく間があいてしまいました。ずびばぜんっっっ。
 さて、今回ですが、セレクトは大井がさせていただきました。よそぢを目前にした私でございますが、いまも心から新作を楽しんで読ませていただいている名香智子さんの作品群(全29冊)です。
 名香ワールドの醍醐味は、かのヨーロッパはおフランスを中心に、貴族や王族たちに大財閥、豪奢なお城、コマわりからはみ出し乱舞する可憐な花々に囲まれての美男美女が織りなす恋愛絵巻(うー長い一文)……ああ、往年の“少女漫画”エッセンスが怒濤のように盛り込まれた“ファンタジーの世界”です。白馬に乗った王子様が現れて、私を幸せにしてくれる---そんな夢を素直に信じていた、かつての少女たちが憧れた世界……。
 細やかで気品ある画風、世の常識やタブーを軽々と越える登場人物の粋なセリフ群は、名香智子さん独自孤高の作風で、非常にクール。少女漫画という己のフィールドを距離をもって突き放して見ている視線が感じられ、そこが、もっとも私が好きな部分であります。
 やおい系やレディコミやボーイズコミック、ホラーコミックなど、さまざまに分化している少女漫画の中で、この名香ワールドは、往年の少女漫画を伝える最後の砦かもしれません。大御所作家さんたちと比べて、いまいち評価が手薄な名香智子さんですが、少女まんが館としては、肩にリキ入れて大賛辞しちゃいます。
 さて、女ま館の協力者であり、少女漫画ファンでもある美術家、もとみやかをるさんから名香ワールドについてコメントいただきました。
 「私が小学生の頃に読んでいた登場人物が、ちゃあんと齢をとって、今も新作に出てくる。こんな主人公は他に知りません。“きちんと少女漫画しましょう”という、デビュー当時から一貫したプロとしての姿勢も、天然ではなくクールだと思います。少女漫画で評価されにくい部分--おフランスさかげんとか、お城とか、貴族とか、大富豪とか、天才とか、超能力とか、美男美女とか、そういった現代日本少女の日常からかけはなれた超ゲンジツ性--を丹念に詰め込んだ幕の内弁当のようでもあり、しかしこの職人芸を楽しまずして少女漫画は語れないのです。いまや絶滅寸前・貴重品種ともいえる、この元祖少女漫画の世界を、皆さん大切にいたしましょう」とのこと。

 ではでは、簡単に作品紹介とまいりましょう。

●『花の美女姫@』『花の美女姫A』(フラワーコミックス/小学館)
 日仏混血の美貌の美女丸ソンモール、姫丸カーモールという双子の兄弟を軸に、個性あるキャラクターたちが織りなす笑いあり、涙ありの絢爛豪華かつ可憐ファンタスティックなお話。この中で重要脇役として登場する大財閥の御曹司アーリンは、きちんと齢を重ねて今も新作の主人公として活躍中。美女姫シリーズの初出は『別冊少女コミック』1973年10月号。多くのファンをもつ、名香智子さんの出世作にして代表作のひとつ。

●『PARTNER(パートナー)』1〜16(フラワーコミックスPS版/小学館)
 『PARTNER(パートナー)』8(フラワーコミックスワイド版/小学館)完

 ソシアルダンスに取り組む少女--宝珠茉莉花(ほうじゅ・まりか)--とその恋愛模様を描いた大長編。1980年11月から1987年6月まで『プチコミック』誌上で長期連載され、人気を博した傑作。世界をまたにかけたさまざまな恋愛パターンが登場し、恋愛バイブルにもなる?
 *蔵書の都合上、ラストの巻のみ判型の違う単行本ですが、通読には支障ありません。

●『名香智子ミステリー名作選集』1〜4(Jour COMICS/双葉社)
 羽良多平吉とエディックスによる美しい装丁の豪華本シリーズ。第1集は1993年2月発行、第4集は1994年5月発行となっている。小粋でぞっとするお話がざっくざく。
  第1集収録作品「麦秋」「翡翠の森」「鴛鴦」
  第2集収録作品「十六夜」「青海波夫人」「蜜月」
  第3集収録作品「藪椿」「紅子」「孔雀草」
  第4集収録作品「霞網」「柘榴」「女郎花月」


【少女まんが館分庫】
場所□デリ&カフェ「Oh!INDIA」(オー!インディア)内壁面
住所□東京都杉並区高円寺南4-6-11
電話□03-3314-0177
営業□11:30-22:30(金・土のみ21:30オーダーストップ)
定休□第1・第3月曜日

少女まんが館URL□http://www.nerimadors.or.jp/~jomakan/